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高森明勅
2020.12.4 06:00皇室

厳しく筋を通された秋篠宮殿下

秋篠宮殿下のお誕生日に、事前に行われた記者会見の内容が、
公表された。

だが、ご長女の眞子内親王殿下のご結婚に言及された
部分の“厳しさ”に、余り気付かれていないようだ。
なので、特に触れるつもりは無かったのだが、改めて取り上げる。

先ず、秋篠宮殿下は、これまで“結婚は認めない”という言い方は
一切なさっていない。
この点が殆(ほとん)ど見落とされているようだ。

秋篠宮殿下は平成30年のご会見で以下のようにおっしゃった。

「多くの人がそのことを納得し喜んでくれる状況…にならなければ、
私たちは、いわゆる婚約にあたる納采の儀というのを行うことは
できません」と。

あくまでも「納采の儀」は行えない、とおっしゃっているにとどまる。
これは何故か。

未婚の女性皇族は今の皇室典範のルールでは、
ご結婚によって皇族の身分を離れられる(12条)。

皇族でなければ、結婚については憲法の規定がそのまま適用される。
そこには「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」することが定められている
(24条1項)。
当然、それをご存じなので、“結婚そのものを認めない”とはおっしゃっていない。
ただ、納采の儀などを行うかどうかは、勿論(もちろん)、
秋篠宮殿下のお考えによって決めることができる。

秋篠宮殿下は、ご自身の判断で行えること、責任を取れることに限定して、
抑制的にお考えを述べておられた。
これについて、翌令和元年のご会見でも「私が昨年お話ししたことと
変わっておりません」と同じお考えであることを確認しておられる。

それらを踏まえて、今年は以下のようにおっしゃっている。

「あくまで私の主観になりますけれども、感じとしては決して
多くの人が納得し喜んでくれている状況ではないというふうに思っています。
で、そのことは娘も恐らく同じ気持ちを持っていると考えております」と。

これは何を意味するか。

論理的に考えれば、改めて説明するまでもなく、
今の状況のままでは「いわゆる婚約にあたる納采の儀というのを
行うことはできません」とおっしゃっているに等しい。

殿下は、全くブレずに最初からの筋を、頑固なまでに貫いておられるのだ。
関連質問へのお答えの中で、「結婚と婚約は違います」と明言されたのは、
まさにこのことを露(あらわ)にお述べになったのに他ならない。

しかし、万が一にも納采の儀を行わない事態に陥れば、
その後の一連の儀式も全て行えないだろう。
その中には、天皇・皇后両陛下とのお別れの儀式と言うべき、
ご結婚に際しての「朝見の儀」も含まれる。

朝見の儀は、皇居の宮殿・松の間で行われる格式の高い儀式だ。
もはや秋篠宮家だけの問題では済まなくなる。
女性皇族のご結婚において、この儀式を行わずに皇族の身分を
離れられたような例は、皆無だろう。

あろうことか、天皇陛下にご挨拶もしないで皇室を去るという、
この上ない無礼になるのだから。
秋篠宮殿下は、最悪、そうした事態まで見据えられて、
眞子殿下に最初の条件をクリアすべきことを厳しく求めておられる。

しかし、これまでの多くの反応を見ると、
殿下のご覚悟が全く理解できていないようだ。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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